厳しい世界

「明日で辞めるんだ」
別のラボの人だけど、仲の良かった研究者からの一言。
上司ともめたとかそういうわけではなく、ラボの研究費の
都合上、ポスドクを雇えなくなったようだ。
「次のポジションは決まってるの?」
っと尋ねてみたが、「まだ」だそうだ。
改めてアカデミアが厳しい世界なんだと感じる。
明日は我が身というやつだ。
正直、こういった世界にいると、彼のように志半ばで、
研究を諦めた人たちを何人も見てきた。
ただこういった厳しい環境だからこそ、質の高い研究が
生まれるのも確かであり、一概にアカデミアの現状が悪い
というわけではないと思う。
最近、日本のネットニュースを見てると研究不正についてのニュースを
よく耳にする。研究不正は日本だけじゃなく、アメリカでも結構聞く。
ちょっと前になるが同じCT州のUConnでワインの研究で捏造があった。
Pubpeerなど匿名で疑惑を投げかけられるサイトもある。実際、
論文を読んでいて、なんか怪しいと感じるデータもたまにある。
それが一つや二つくらいなら、自分の解釈が違うのかなっとか、ちょっとした手順の違い
から生まれたノイズかなっとか、たまたま差が出ただけなのかなっなどと思うが、
そういった怪しいデータが幾つも論文から出てきて、それらが同じ研究者からの論文だと、
もうあいつは信用ならないっと厳しい目で見るようになる。
嘘のデータのよって科学の進歩が遅れる憤りもあるが何よりも、
彼のような「正直にやって、夢を諦めた研究者」のことを考えると、
やはり怪しいデータには厳しい目で見てしまう。